約束
絶対に破れない約束。指切りげんまんして、嘘付いたら針千本飲まされると言うが、現実は中々そうはいかない。約束の時間に遅れて相手が苛立っている。記念日を忘れてパートナーが悲しい思いをしている。亡くなってしまって、二度と会うことはないであろう大切な人と交わした約束。人の心は絶えず揺れ動きながら、それでも毎日何かを考えて感じながら生きていく。
自分以外の誰かの気持ちを想像する力があれば、誰も傷つけずに生きていけるだろうか。いつまでも笑い合っていられるだろうか。教会のバージンロードを花婿に向かって、たくさんの祝福の言葉を浴びて、ヴェールを被ったまま花嫁はゆっくりと歩を進める。誓いの言葉をそこにいる皆が聞いている。「健やかなるときも病めるときも、富めるときも貧しいときも」とお互いに繰り返し、ふたりが永遠を誓う。
僕も30代だし家族も多いので、結婚式に出席する機会がとても増えた。ふたりが出会って決断して、晴れの舞台を迎えるまでに一体どれだけの人が関わってきたのだろう。親、兄弟姉妹、祖父母、友人、学校の先生、僕が想像に及ばないところまで含めるともっといるだろう。人ひとりが生まれるのと同じくらい、そのふたりが出会ったことと、それによって僕を含めた誰かがその場でふたりをお祝いできることに感謝したい。
しかし現実には、うまくいかない時だってあるだろう。人間だもの、生まれた環境も育ち方も違うからある意味自然なことである。そもそもこんな話をしている時点で、僕はおせっかいなのかもしれない。でも人間同士がうまくいかない原因を考えることで、うまくいっている時でも、よりよい関係を築く手がかりは得られるかもしれない。自分以外の誰かがというよりは、自分自身の関わり方がどうかを考えたい。
約束は守るべきだと思っている。他の誰かとの約束も、自分に対して決めた約束事も。自分との約束と言うと小難しく聞こえるかもしれないが、実際は目標を立てて行動して達成してを繰り返すことだと思う。特別なことではなく、何気ないことでも繰り返し行動していくことで習慣になっていく。習慣になると今度はやらないと気持ちがすっきりしないので、そうなったらあとはあまり意識し過ぎず坦々とやっていく。
約束を守ったり破ったりしながら、きっと誰かが僕の知らないところで傷ついていたことも知らずに生きてきたんだろう。だからこれからはその分も、いつもそばにいてくれる人を大切にすると決めた。約束だから。