日輪刀DX

 鬼を完全に消滅させるには太陽の光を浴びせるか、もしくは日輪刀と呼ばれる特殊な刀で首を斬り落とす必要がある。『鬼滅の刃』で主人公達が戦いの際に使う武器の名称だ。原作を読み始めて3日目に突入してしまった。全23巻は自分が思っていたよりもボリュームがあって、少ないと思っていた文字数も結構多い。一晩で読み終わるはずが、眠気に勝てずにずるずると長引いてしまっている。正月の休みは昨日で既に終わっていて、在宅勤務も始まっている。実家にいる時から一向に東京の感染者数が減らないと、画面上のテロップで何度か見ていた。帰省から帰って来てからも、もうやるべきことを実直に続けるしかないなと思いながら、今日もオレンジ色のカーテンを開けて太陽の光を取り込む。

 日輪刀を模した玩具が人気らしい。去年のクリスマスの頃にニュースでやっていた記憶がある。どこにもないのかなと思っていたら、立ち寄った子ども用品売り場で1点だけ置かれているのを見つけた。何箇所も走り回ってやっと1個見つけた人もいるらしいと聞いていたけど、皆が思い付かないような場所では購入できるのかもしれない。一時の人気だったとしても、これだけたくさんの人が注目している作品なら一度は読んでおいても損はないだろうくらいにしか思っていなかった。ただ漫画を読み進めれば進めるほど、アニメ版ではまだ描かれていないであろう事実が次々と明らかになって、読み進める手が止まらなくなって時間も忘れる。

 面白い漫画の共通点と言っていいだろう。続きが読みたくて仕方がないとか、また読み返したくなるとか。まだ最後まで読み終わっていない自分も、既にもう一度最初から読み返してもいいかなと思い始めている。読み終わった後に手元に残しておくかどうかは正直何とも言えない。数年経ってまた読みたくなるかと聞かれたら、そうはならないと答える。数ある少年漫画の中でも異彩と言えば異彩だ。最後の最後に神がかり的な力を主人公が発揮して悪を倒すという分かりやすい展開にはなっていない。主人公が要であることに変わりはないのだけど、彼1人だけの力で物語の方向性を左右しているという印象はない。もちろん主人公が本来の力を発揮して圧倒的な力で敵を葬るという展開も嫌いではないが。

 主人公達と敵対しているからと言って、鬼である者達が純粋な悪だとは言い切れない。ただ混乱を楽しんでいるようにも見えない。人間であった頃に様々な事情を抱え苦しんでいたところを見計らって、悪いように付け込まれている者ばかりだ。少なくとも僕にはそう見える。主人公が憎んでいるのは彼らの人間に対する行いであって、鬼ではあるが人格を全否定しているわけではない。中には例外的な扱いを受けているキャラクターもいるが、敵とみなされている彼らが生まれてた時から悪い行いをしていたのかと言えばそうではない。彼らも主人公達と同じ人間だったのだ。人間を鬼に変えられる人物はたった1人しかいないことになっている。最後まで読み進めて感じることだが、元凶とも言える彼にすら同情の余地はあるのではないかと思う。

 座椅子と押し入れの間の隙間に単行本を積み上げていった。1巻読み終わる度に高さを増していく。連載は既に終了している。23巻という数字は、少年ジャンプの人気漫画の中でも少ない方だと思う。序盤は物語の流れが穏やかだと思っていたら、終盤の戦いは一気に畳みかけるように展開される。その中で人間と鬼の因縁が、登場人物達の回想場面から浮かび上がってくる。そして主人公である竈門炭治郎と鬼の始祖である鬼舞辻無惨の対峙が、人々の繋がりの果てに予め決まっていたことのように感じる。対峙するところまではさながら運命と言い切れるのだけど、そこから先はまさに危機に立ち向かうキャラクター達の行動に委ねられている。

 日輪刀が断ち切るのは悪しき行いであって、刀の柄を握り締める彼らの行いは、幾重にも続いてきた人と人との繋がりを途切れさせないようにすることだ。

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