12月は寒い

 隙間のできた僕の首元に、年末が少しずつ近づく冬の風が所狭しと吹き込んでくる。襟を引き上げてその隙間を埋めたいのだけど、そうするには僕の着ている上着の生地が足りなかった。足元は秋口からずっと吐き続けているサンダルだ。マジックテープで固定するタイプの安い履物。テープを外したと思って足を抜こうとするけど、反り返ったテープが実はまだくっ付いたままで逃がしてくれないことが時々ある。季節感がないのは僕自身分かっているつもりだが、スニーカーの紐を結ぶことを思えばマジックテープから力尽くで脱出する方が少しだけマシだと思っている。

 12月は寒い。もちろん今月になっていきなり寒くなり始めたわけではない。東京の冬は比較的暖かい。僕が知っている寒さの中で一番厳しいと思ったのは、群馬県の草津温泉に出かけた時だった。僕は東京の冬を過ごすのと全く同じ格好で行ったのだけど、まず足元から冷えてくる。初めての時も、そして今も同じメーカーのスニーカーを履き続けている。特別靴底が薄いわけではないと思うが、あまりにも足が冷たいから底のゴムが無くなったんじゃないかと思った。どれだけ上着を着込んだとしても、足元から伝わる冷気には敵わない。どこか暖かい場所を見つけるのが無難だ。

 寒さの度合いを気温の低さで考えるならば、間違いなくカナダに行った時が一番寒いと言える。大学生の時に留学した話を以前にこのブログで書いている。湿気が少なくて夏は確かに過ごしやすいし、冬の気温が低いということも事前に聞いていたから準備して飛行機に乗った。だが実際にカナダの冬を目の当たりにして、マイナス数十℃がどれくらい寒いかなんて想定しようがないと思った。当時は関西に住んでいたのだけど、そこで体験する寒さなんて足元にも及ばない。深呼吸をすると身体の中心で、吸い込まれたばかりの冷気の存在を確かに感じられた。ペットボトルの水を道でこぼした時には、すぐに凍り始めた。極寒の地域で空中に放出された水分が一瞬で凍っている映像を見たことがあるけど、充分あり得ることだろうと思えた。

 確かに気温で言えばとても低い数字ではあったけど、零下になってそこからどれくらい低いかどうかでの体感の違いはあまり感じられなかった。とにかく寒いの一言に尽きる。草津温泉は周りを山に囲まれているけど、僕が訪れたカナダのそこは一面雪の平原だった。銀世界と言うには人々の生活の痕跡が強すぎる気がしたけど、雪景色には変わりがない。太陽が射す時には雲が少ないから、雪の表面が少しだけ溶けてまた凍ってしまう。記憶が定かではないが、僕も数回それで転んだことがあったはずだ。そんな寒い日にはホットチョコレートと現地で呼ばれている、ココアのことだと僕は未だに思っているが、温かい飲み物を啜っていた。

 1年が経つ間に何があろうと、今のところ冬は毎年必ずやってくる。そして必ずその後ろに春を引き連れてやってくる。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

未分類

前の記事

肩車
未分類

次の記事

和を乱す