11月も終わり

 パーカーの下にTシャツを着ているだけでは、寒くて外を歩けない季節になった。11月も終わろうとしている。そして12月が来て、すぐに2020年も終わりを迎えるだろう。年末が近いとは言っても、まだ1ヶ月近くあるのだから今年やり残したことがないようにしたい。部屋の下の駐輪場の天井から水が漏れることはなくなり、僕らも元の生活に今日から完全に戻った。外から帰ってくるとまだ少し接着剤のような匂いがするけど、時間が解決してくれると思う。地元にいる時から着ていた上着は、そろそろ買い替え時かもしれない。

 洗濯機の蛇口の位置が変わっていた。以前は洗濯機の後ろにあったから、洗濯機を奥に設置できなかった。圧迫感を感じるほどではなかったけど、手前に少し飛び出していた。加えて脱水の時の激しい回転と振動で、位置が少しずつずれているような気がしていた。それが今回の工事で蛇口は向かって左側になったので、洗濯機の出っ張りが無くなることになる。その分少し広くなった気がする。足元には洗濯カゴに収まりきらないほどの衣服が積み重なっている。これからそれらを中に詰め込んでスイッチを入れるのだ。

 トレイを引き出して水が流れ始めるのを待っている。蛇口の中から今までとは少し違う音がして不安になった。しかし直後に何事もなく水が流れ始めたので、液体洗剤と顆粒の漂白剤を投入してトレイを元に戻した。窓からは回転する中身が見える。上から水が流れているのだろう。衣服が少しずつ水分を吸収し始めて、ふわりと回っていたのがバタバタと折り重なるようになった。扉の内側には小さな水滴が付着し始めて、先程の洗剤が掻き回されてできたであろう泡も確認できる。柔軟剤は最近使わなくなった。匂いが強いということと、入れない方が汚れが落ちやすいと感じるからだ。

 張り替えられた床材の色の影響かもしれない。部屋が以前よりも明るく感じる。壁紙の一部が張り替えられて、少し赤みがかっている。息子の命名書はおそらく作業の為に一度外してあったのだろう。今度は彼が寝ている布団の右側の壁に貼り付けた。これで彼が誰なのかすぐに分かる。住み慣れた家に戻ってきたというのが、率直な感想だ。特別広いわけでもないし、東京だからといって家賃が常軌を逸しているほど高額でもない。安いかと聞かれたら首を縦には振れないが、それでも今の自分達の収入であれば充分暮らしていけるぐらいだ。

 自分達が過ごした時間がそこには流れていて、それはどこにも行かない。留守にしていた間も塊となってそこに留まっていて、戻ってきた僕らを迎えてくれる。来年には引っ越すと決めている。今回の工事の件があってもなくてもそのつもりだった。でも生まれたばかりの息子を迎えたのも、四苦八苦しながら数ヶ月間育てたのもこの部屋だ。もう少しだけお世話になろうと思う。

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