2月は、もう春

 穏やかな午後。週が始まってすぐの祝日。通りに人が溢れ、思い思い休日を満喫している。昼過ぎまで眠ってしまった僕は、熱めのシャワーで目を覚ます。先週は風が強く、寒くて行けなかった羽根木公園に出かけた。

 小田急線の梅ヶ丘。下北沢からだとちょうど二駅目。歩けないことはないが、まだ肌寒い季節は辛いかもしれない。電車内は人がまばらで、祝日にしては少ない気がした。週の途中で1日だけ休みの日があっても、大掛かりな予定を入れるのは難しいだろう。僕だってそのひとりだ。

 下北沢、世田谷代田と停車し、その次が梅ヶ丘。駅ホームは地上にあり、以前住んでいた狛江を思いだす。上京したばかりの頃は、家賃が高くて住みたかった場所には最初から住めなかった。狛江駅から少し歩いたところにあった部屋はひとりで住むには十分な広さがあり、家族連れも多い住宅街にあった。程なくして引っ越したが、子どもがいるならとても住みやすい地域ではなかろうか。

 梅ヶ丘駅で降り、改札を抜けると瀬戸物を売っているスペースがあった。茶碗を見ながら、これから増えるであろう小さな家族を思って茶碗を眺めた。その小さな手にはきっと大き過ぎるし、瀬戸物だから不意に割ったりしてしまうかもしれない。気が早いとも思うが、楽しみだ。

 図書館の裏手に羽根木公園はある。駅からは歩いて5分もあれば着く。祝日ということと、ちょうど梅まつりを開催中だったようで老若男女、大勢の人で賑わっていた。公園入り口の階段の両脇に梅の木が繁っている。梅の種類がどれだけあるのか僕にはよくわからないのだけど、見た限りでも5〜6種類はあるようだ。梅の花自体はまだ5分咲きといったところだけど、ほのかに甘い花の香りが漂っていた。カメラを片手に、梅の花が写真に一番よく収まるアングルを求めて枝から枝へと歩いては止まりを繰り返す人達がいた。気持ちのいい陽気に、ベンチで連れの肩にもたれかかって昼寝をする人もいた。

 階段を登りきったところにも梅の木がたくさん植えられていて、訪れた人々を楽しませていた。公園内を進んで、無料のお茶を飲んで少し休憩する。グラウンドやテニスコートの横を通り過ぎ、遊具が置いてあるところまで歩く。吊り輪にぶら下がって身体を伸ばす。懸垂をしようと身体を持ち上げたが、うまくいかなかった。運動不足ではないはずだけど、重力に逆らうのは中々大変だ。園内をぐるっと回ると、林の中に剥き出しの地面のエリアがある。手作りの様々な遊具が設置されていて、子ども達が思い思いに飛んだり、走り回ったり、叫んでいる。都心近くで、中々目にすることがないかもしれない景色がとても新鮮に映った。

 公園からは歩いて帰った。思った以上に距離があったけど、時々はこんな疲労感も心地いい。女の子と小さな男の子が、公園の鉄棒で遊んでいた。女の子が勢いよく逆上がりをするのを見て「しゅご〜い!」と男の子が繰り返す。身体が小さくて、自分にはできない逆上がりを見ながら全身で声を出している彼の瞳は、早春の太陽よりも眩しかった。

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