漏水
誰の責任だろうか。誰かひとりの責任にできるだろうか。誰の責任かどうかはあまり重要ではなくて、漏れているのなら早く止めてほしいだけだ。洗面所も台所も風呂場も洗濯機も、考え得る限りの箇所を確かめたが水は漏れていないようだ。排水管だとか給水管だとか言われても、素人にはピンとこない。剥き出しになっているのなら、目で見て判断できるのかもしれない。いっその事そうしてもらった方が、点検だって簡単にできて交換やら工事をするのも楽かもしれない。でも現実はこうしている間にも、水滴となって流れ続けている。
家賃は毎月滞りなく払い続けている。手数料が掛かるから家賃の為だけにその銀行の口座を開いた。月に1回しかATMに行かないし、貯金をしているわけでもないけど、今はスマホで残高を確認できるから便利と言えば便利だ。銀行同士の送金を無料にしてくれたらもっとありがたいが、その代わりに口座維持という名目で毎月お金を支払うのも希望しない。特に騒音を立ててはいないと思うし、至って普通の生活をしていると思っていたけど、それに関係なく突然連絡が来ることもあるのだと知った。
工事が必要らしい。住んでいる部屋付近の給水管から水が漏れている可能性が高いとの話だった。施工は避けられないとしても、一体どんな規模になるのかが肝心だ。聞いたところによると、過去には一時的な退去が必要になった場合もあるらしく、部屋を確認したいとのことだった。工事か否か、僕に判断するのはほぼ不可能なのでお願いするしかない。物件の管理会社の方と、施工業者の方1名ずつがいらっしゃった。台所の下の扉を開けたり、風呂場を確認している間に案内を受けた。まず工事は必ず必要とのことだった。放置しても物件全体が痛むことになるので、協力して欲しいとのことだった。
どんな工事になるのかが問題だ。今の生活に影響がないことを願っていたが、どうも雲行きが怪しい。床を部分的に剥がして中の状態を確認し、数日を掛けての施工が必要と言われた。そして一時的に別の場所に移る必要があるとも。事前に想定していたけど、まさかないだろうと思っていたパターンだった。彼らの判断が間違っているとは思わないが、住んでいる自分達に全く落ち度がない状態で、ただ移って欲しいと言われても素直に返事をする気にはならない。もちろん建物の他の部屋にも住人がいるので、いつまでも放置はできない。現に漏れた水で困っている住人もいるのだから。
時間が経てば配管だって古くなる。定期的に点検はしないのか聞いてみた。今住んでいる建物だけではなくて、基本的に水が漏れた時にその都度対処するものらしい。そう言われたらそれ以上何も言えない。工事が避けられない事情も分かる。ただ月齢の低い子どももいるし、今すぐ引越しもできない。確実に入居できる前提で違う物件に住むことなど更に夢の話だ。ついてないなと思いながらも、ある意味誰もが経験できることではないからと切り替えることにした。仮にこちらの要求の一部しか通らなかったとしても。