互いに熱く
夜寝る時には、よっほど寒くない限り半袖と短パンで布団を被っている。東京にいてとても寒いと感じる日数はそんなに多くない。初めて群馬県の草津温泉に出掛けたのが12月だったが、その時の寒さが今までで一番身体に応えた。それを思えば東京の冬はずっと暖かい。雪が積もることがないわけではないが、すぐに溶けていつの間にか無くなっている。どんな季節でも風呂に浸かった後は、汗が中々止まらないし身体もしばらく熱いままだ。タオルを上半身に被ったまま、息子の耳掃除を始める。
横になっておっぱいを飲んでいる息子の耳の穴は小さい。綿棒が奥まで入らないように先端から1cmくらいのところを摘んで、ゆっくりと擦る。毎日やらないとすぐに垢が溜まってしまう。代謝が大人とは比べもにならないくらい良いのだろう。何と言ってもまだ生後3ヶ月と少しだ。完成されていない身体の機能は色々あるだろうし、大きさだってまだまだ発展途上だ。体重もどんどん重たくなっていく。生後間もない頃の写真を見返していると、その時はまだ僕の両腕の中にすっぽりと収まる大きさだった。
今は横抱きにすると、とても窮屈そうな表情をしている。でも窮屈そうにはしていても、まだまだ赤ちゃんだなとも感じる。耳掃除をしていると、汗が生乾きの髪の毛からこぼれ落ちる。バスタオルで拭いながら綿棒を動かし続けた。耳掃除と一緒に爪が伸びていないかも確認する。切り過ぎないようにはするけど、子どもとは言え本気で身体を掴まれたら中々痛い。風呂に入っている時に僕の首から下げたタオルを掴まずに、胸板を鷲掴みにしてくる。構わないのだけど僕の胸毛は少し痛む。
ひと段落したら部屋の電気を消している。そのまま寝てくれたらとは思うけど、最近は目をぱっちり開けてしばらくは機嫌良く手足を動かしている。絵本を読んだりして時間を潰しながら、ぐずり出すまで辛抱強く待ち続ける。大人でも子どもでも「寝なさい」と言われて皆が全員すぐに寝られるわけではない。それぞれのペースがあるし、言葉を発しない子どもなら親も本人もリズムを把握する途中だ。絵本が途切れるとすぐにしかめっ面をして泣き出した。
まだ火照った身体に生地の薄いTシャツを着た。夜は気温が上がらないから肌着の上にもう1枚服を着た息子を抱き上げる。首がしっかりしてきたからか、上半身を自分で支えているようだ。目は開いているから眠るまでまだしばらく掛かるかもしれない。そのまま抱き抱えていると、首が垂れてうとうとし出した。眠ってくれるかと思ったが、胸に顔を擦り付けるだけで中々動きが落ち着かない。目を開けたり閉じたりを繰り返している間に声を挙げて泣き出した。
僕の身体も熱いし、息子も泣いて熱くなって汗を少し掻いていたんだと思う。何とか寝かしつけるところまでと思ったけど、今夜はどうやらダメみたいだ。こんなことを言うと大人気ないと言われそうだが、正直悔しい。息子が自分の思い通りに寝ないことにイライラしてしまっているということ、そして自分で最後まで寝かしつけられなかったことがなぜかとても悔しかった。そういう時もあると割り切ってしまえばいいのは分かっていても、時々熱が入ってしまう。でも完璧な子育てなどないのだから、あまり思い詰めずに向き合っていかねば。