バイクに乗って

 東京は、大体どこでも電車で行ける。車より早いことだって珍しくない。職場に通勤するのも電車だ。東京タワーが近く、暖かい季節には昼休みに芝公園でひと休みする。港区ではよく高級スポーツカーを見かける。僕もいつかは乗ってみたいが、車よりもバイクのほうが好きだったりする。

 初めてバイクに乗ったのは大学生の時だ。町のバイク屋さんで、50ccのホンダカブを買って通学に使っていた。車に比べると、バイクは不都合なことが多い。腰に負担がかかりやすく、風が身体にまともに当たって疲れやすい。荷物はあまり積めない。股下にエンジンがあって、夏は猛烈に暑い。

 そんなバイクだが、車にはない魅力が詰まっている。少なくともスポーツカーを除く乗用車にはない魅力だ。バイクは、ハンドル操作と同時に車体を傾けながら旋回していく。プロのレーサーの映像を見ると分かるが、肘がアスファルトに擦れるほど車体を倒して曲がっている。それだけ強い遠心力に抗っているのだが、まるで車体とライダーがひとつの塊のように融合して走る姿が美しい。車体の動きを邪魔しないように、身体をコントロールすることが、スポーツで身体を動かすような感覚に近くてすごく楽しい。

 ホンダカブを乗っている間は、もちろんそんなスポーツ性は強く感じなかった。留学から日本に帰って来た大学4年生の時に、家族が乗っていたホンダの400ccのネイキッドバイクに乗ることになった。言わずもがな、ホンダカブとは排気量が全く違うのでパワー溢れるスポーティな走りができた。一人暮らしの家と実家の往復を何度もバイクで走った。寒い時は、冷やされた身体で浸かる熱い風呂がとても気持ちよかった。

 400ccでも十分楽しかったが、運転免許と一緒に大型二輪の免許も取っていたし、やはりフルカウルのスポーツバイクへの憧れは持ち続けていた。大学を卒業し、地元に帰って働き始めてから少しずつ貯金を増やし、新車で1000ccのホンダCBR1000RRを購入した。フルローンで購入したので、毎月のやりくりに余裕があるとは言えなかったものの、乗っている時の楽しさには変えられなかった。パワーは言うまでもなく、車体自体の運動性能も今まで乗ったバイクとは違った。乗っている自分の動きにとても素直に反応するバイクで乗りやすかった。限界性能はずっと遠くにあるので、安全な範囲でスポーツライディングを楽しんだ。

 上京する時、バイクも一緒に連れて行きたかった。しかし駐車場の問題や維持費のことを考慮し売却することにした。本望ではなかったが、身体が元気である限りバイクにはまた乗れる。またあのスリルと興奮に、身を任せよう。

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