下北に温泉
東京で暮らすようになってから、温泉と言えば草津温泉か実家に帰った時に近くのスーパー銭湯に出掛けるくらいだった。東京都内でも探せば銭湯はあるのだけど、東京にいてわざわざ出掛けてまで浸かりに行かなくてもと思っていた。最近は小さな息子と一緒に家の風呂に浸かっているし、特にそれで不満があるわけではない。下北沢を含む前後数駅で再開発が絶賛進行中で、いつの間にか世田谷代田駅の近くに温泉施設が開業するらしい。しかも何と今月末とのことだ。
下北沢の地面を掘って、温泉が湧き出している光景は全く想像出来ないし、現実には起こりそうにない。お湯はどうするのだろうか。どこかから運んで来るのだろう。そして温泉だけではなく宿泊も可能らしい。家から向かうとしたら、小田急線で一駅だけ電車に乗るか、下北沢駅を越えて少し歩いて行くかだ。下北沢駅の駅上から世田谷代田方面を眺めると、色々なお店が連なった通りが出来ていて、一番奥には白くてテカテカの工事中のバリケードで囲まれている場所があった。おそらくその目隠しの向こう側で建設がずっと続いていたんだろう。
まだ息子が妻のお腹にいた春先だったと思うが、その時に出掛けて以来その付近がどうなったのか知らなかったし、子育てで温泉施設どころではなかった。オリンピックも延期になっているし、現在進行中の工事も一旦ストップしているのかなと勝手に考えていた。もうすぐオープンすると知ったのは今日の昼過ぎだった。調べてみたら、既にホームページも出来上がっている。宿泊料金は決して安いとは言えないが飛び抜けて高いわけでもない。値段に見合った体験が出来るのか楽しみではある。
以前草津温泉に出掛けた時に泊まった旅館は今も忘れられない。その旅館は大人しか宿泊出来ないので、息子が生まれる前に行けて良かった。少々変わったスタイルで、館内に幾つかある風呂場は全て貸し切りだ。貸切自体は珍しくないと思うが、事前に予約などをせずにその時に空いている風呂場で入浴することが出来た。誰かが入浴していれば待ってもいいし、別の風呂場が空いていればそちらに入ることも出来る。大浴場のように他の部屋の宿泊客と顔を合わせて入浴する風呂はないので、気を使わずにお湯を楽しめるのが気に入っている。
下北に出来る新しい施設では、来月から日帰りの入浴も可能になるとのこと。銭湯のように毎日でも、という値段設定にはならないかもしれないが、風呂は毎日でも入りたいので値段に関係なく一度は試したい。料亭もあるらしいから、どんな料理が味わえるのかも楽しみだ。例え源泉掛け流しではなくても、人里離れた陸の孤島ではなくても、東京には東京の景色がある。温泉は色々な場所にあるけど、そこから見える空は全てひと繋がりだ。その温泉は、どんな風に僕らを癒してくれるだろうか。