台風の東

 これから先、一体何度コンビニのビニール傘を買うことになるだろうか。事実、これまで数えられないくらい色々な場所のコンビニで傘を買った経験がある。もちろん理由もなく買っているのではない。ある時には出掛けた先のどこかに置き忘れたり、またある時には風が強すぎて手に持った傘をコントロール出来ずに骨が曲がったりして元に戻らなくなった時に都度買い換えてきた。コンビニで購入する時に1回で払う金額は多くないが、何本も買い直していることを考えると、合計した金額で高級な傘の数本は楽に買えてしまうだろう。

 久しぶりに在宅勤務開始前の早い時間帯に傘を差して出かけた。傘を持たずにはとても出かけられる天気ではなかったから。日本の南で発生した台風が、勢力が強いまま北上しているとニュースの見出しが告げていた。週末は天気が良くならないと覚悟していたが、関東からはある程度距離があるし、大きな影響はないと侮っていた。家には日傘が1本と雨避けの傘が2本あって、2人で1本ずつ使える。ただ今日の雨には傘の直径が小さ過ぎて、背中側も正面からも雨が滝のように滴ることになった。

 玄関を出た時に木の葉に雨粒が打ち付ける音で、雨の勢いが想像以上だということは容易に想像出来た。階段を降りながらオートロックの向こう側を見ると小さくはない水溜りがあった。僕は安物のサンダルを履いていたが、帰って来る時には足がずぶ濡れだろうなと思いながら、意を決して外に出た。広げたビニール傘があまりにも小さく、コンビニで大きいサイズの物を買い足す事に決めた。息子を抱いた妻には先に歩いていてもらって、買い物をした後にすぐ追いついた。

 マンションの一室だろうか。助産院に出向くのは初めての事だった。本当なら爽やかな秋晴れの朝に穏やかな気持ちで歩きながら向かいたかったが、自然相手ではどうしようもない。前日の夜から降り続いていた雨は、時折雨足が弱くなったけどすぐに傘を叩く音が大きさを取り戻していた。妻と息子を助産院まで送り届けたら、豪雨の中を傘の柄をしっかり握って家へと向かう。まだ朝ご飯を食べていなかったから、傘を買ったコンビニに再度立ち寄る事も考えたけど、Tシャツもズボンも濡れていたのでどこにも寄らずにそのまま帰った。

 病院の先生達、世田谷区の保健師、そして助産院の助産師に子育ての悩みを相談し様々な助言を頂く。皆が同じ事をいうわけではないし、同じ質問に違う答えが返ってくることもある。最終的には直に触れ合っている自分達が望むように育てるしかないと改めて強く思う。子どもと向き合う毎日は、本当に新しい発見と苦悩の連続で、でも1日の終わりに見る寝顔が真摯な気持ちにさせてくれる。親になって本当に良かった。雨降る日も、強い陽射しの日も、凍える寒ささえ糧にして前に進み続ける。生きるというのは、晴天の日ばかりではないのだから。

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