8日間
アスパラガスを買いにスーパーに出かける。鞄の中には白と鼠色の買い物袋が今日も入っている。レジ袋をもらわない生活になってしばらく経ったが、台所の下の紙袋にはビニール袋のストックがなぜか溜まっている。夕方だからなのか、スーパーの入り口は人が多い。軒先には日除けの下で野菜が並べられている。ただ今日は予め買う物を決めてから家を出たので素通りして店内に入った。アスパラガスだけでは物足りないので、肉か魚か何かを追加で買おうと思う。
前回一度作ったパスタ。アスパラガスとタコをパスタソースと絡めて食べた。アスパラが程よく塩気を吸っていてとても美味しかった。調理時間も比較的短く済むし、洗い物も少しでいい。週末に作り置きしたカレーをストックしておいて、合間にパスタや他の物を作れば食費も思った程掛からない。スーパーと家の往復がメインになる生活を始めて既に半年が経とうとしている。正月を迎えたのも最近だと思っていたくらいなのに。
全くテレビを観ていなくても、情報を得る手段は幾つもある。出掛ける前にはスマホの天気予報を必ずチェックするし、ネットニュースを開けば今日の東京の感染者数が一番上の見出しに表示されている。その数字を見ながら増えた減ったと関心を持って、自分の行動を見直してひたすら耐える日々がずっと続いている。誰も感染しなければいいと切に願うのだけど、僕には身近な人を守るので精一杯だ。僕が気を付ける事で、ほんの少しでも医療関係者の一助になってくれればと思う。
育児休暇は取得せずに、有給休暇を使って7月の約半分を休んだ。週末を入れて約2週間は主に子育てに費やした。2週間あれば劇的に親の負担が減るだろうと何となく思っていたけど、実際はそうはいかない。3歩進んで2歩下がるではなく、毎日1歩か半歩くらい進んでいるというところだ。一見すると遅いようにも見えるけど、大人に比べたら驚異的なスピード感だ。あっという間に大きくなると言うけれど、それはそれぐらいの速度で大人も気付かない間に成長している証なんだろう。
外が暑くなる前に散歩に出掛けたつもりが、午前10時を過ぎると日差しが容赦ない。昨日買った虫除けスプレーをベビーカーに振りかけ、同じく昨日買った小型の扇風機で、ベビーカーの持ち手の近くにあるメッシュで覆われた覗き穴に向けて風を送った。涼しいとも暑いとも言わずに静かにしているのを時々覗きながら、荒いアスファルトの上のベビーカーを押し続ける。ドラッグストアに寄って買い物をした帰りに、街を一望できる場所へ寄り道した。日陰は少ないけど風が通って気持ちがいい。鬱屈した気持ちもどこかに持っていってくれたらと思いながら空を見上げていた。
不安はいつでも付き纏う。払い退けても次々と押し寄せてくる。何もかもが安定しているとするなら、僕達は前にも後ろにも進む必要はなくなってしまうのではないか。不安というのは、行動して払拭する為にあると考えると、人間が進歩する為には必要なものに思える。身の回りの状況は刻一刻と変わり続ける。それを認識しているかどうかは別にして。そんな中にあっても、不安は成功の種と思って生き続けることが力になると信じている。