出産手当金
「手当」という言葉がある。特別慣れ親しんだ言葉ではないが、全く初めて聞く言葉でもない。その意味を調べてみると、ある物事を予測して準備しておくこと、とあった。僕の個人的な見解とも大きく乖離してはいない。ならば出産手当金とは、実際の制度がどうであれ言葉だけで考えると、出産前に収入が減ることを事前に予測して給付される物と僕は認識する。しかし実際の制度はそうなっておらず、事が終わってから給付までにかなりの時間が掛かる仕組みに、僕は納得が行かない。
「納得が行かない」と僕が叫んだところで、いきなり制度自体が変わるはずはない。そんな事は重々承知しているつもりだが、意見は言わせてもらう。そもそも産前の休暇は会社に伝えて取得するわけだから、事前にいつから出産予定日まで仕事をしないかは把握できるはずだ。産後であっても、手当金の対象日数は一律決まっているのだから出産がいつになっても金額は同じではないか。それなのに、産後一定の期日まで経過しないと本人が働いていたかどうかの証明ができない、と説明されても理解し難い。
給付する側は、出産した本人が産後働いているかどうかを目視で確認にでも来るのだろうか。会社からのいつからいつまで本人が働いていませんという申請に基づいて手続きを進めるのではないのか。決まった期日が経過するまでは給付の手続きが進められないと、問い合わせた時には回答があった。産前の休暇に入った時点から、収入が減る事に対する不安というのは少しずつ募っている。出産費用自体は、病院と連携して直接差し引きされてとても助かった。だが産後2ヶ月近く経過するまで待つというのは、収入が必要な時にそれだけの期間引き延ばしにされるのと同じ事だ。
「〜生活を保証し、安心して出産前後の休養ができるようにするために設けられている制度〜」との事だが、実際のところは当事者は給付があるまで安心できていない。制度が目指す安心とは一体何だ。時間が掛かるからそれまでは自分達で何とかしてね、という事だろうか。この制度による産前の給付が一切ないのに、どうやって安心して産前以降の休暇に入れと言うのか。妊婦とその家族、そして子どもの為の制度とは到底思えない。
「少子化」と口で言うのはとても簡単だ。子どもの数が少ない原因はひとつではない。ひとつではないから、この制度だけを見ても、産む本人や家族に寄り添った物とは到底言えない。誰も何も寄り添ってくれない社会に生きて、子どもや家族が増えても安心だと思えるだろうか。「もらえるだけありがたい」という意見もあるだろう。しかし給付を待つ間にも出費は続く。子どもも親も成長する。未来の為に大切なのは今だ。いつか力になります、と言っている間に苦しんでいる人達がたくさんいる。