大学生、留学へ行く

 卒業して10年以上経った今も、大学での経験は大きな糧になっている。

 本命の大学は別にあったけど、本気で目指す為の準備にエネルギーを費やす精神状態に至っていなかった。思い返すと、時間はあったはずなのにやりきれなかったことがいくつも浮かぶので、合格できないのも無理はない。本命であって本命でない。不合格だったけど、原因は自分にあると納得した。

 通うことになった大学は、高校の英語の先生から紹介された学校だ。担任の先生からも「どの大学に行くかよりも、選んだ大学でどう過ごすかが大切だよ」と言われた。確かにそうだなと思う。学生には平等に4年間が与えられても、過ごし方次第で身につくものや出会う人、そして経験は違ってくるはずだ。

 入学してすぐは、講義が終わるとすぐに家に帰る生活を続けていた。ある時同じ学科の先輩に誘われ、英語を専攻する学生で集まった会に参加することになった。秋の学園祭で専攻する言語ごとに、学生が劇を創作して演じる出し物を手伝うことになった。演劇部とかではなく、あくまでも自由に創作して舞台を作り上げる。脚本、舞台セット、衣装も手作りだ。最初は舞台セットの作成を手伝っていたが、登場人物を演じてみないかと提案された。当然だが、登場人物を演じるということは、舞台の上でたくさんの人の視線が注がれる中でパフォーマンスしなくてはならない。自分はそういった状況に今まで縁がなかったし、自信がなかったので即答できなかった。

 なぜあの時、やりますと返事をしたのかうまく言葉で説明できない。僕は結局、1年生と2年生で2年連続で演じた。演技はよかったのか悪かったのかはわからない。度胸は少しついたと思う。舞台上で浴びるスポットライトがとても気持ちよかったのを覚えている。学園祭が終わっても、お酒を飲む機会があったりして色んな人と話をすることが増えた。恋もした。講義にも出て、英語の勉強にはより一層力を入れるようになった。そして学内で交換留学生の募集があり、応募することにした。そうして僕は、3年生の1年間を丸々海外で過ごすことになる。

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