ウクレレ3代

 ウクレレが3本ある。今そのうちの2本は押入れの中で眠っている。3本目を購入してからはしばらく弾いていない。悪いなと思いつつ、一番馴染んでいる3本目ばかり弾いている。最初のウクレレは新宿の楽器屋で買って、残りの2本は御茶ノ水駅近くのウクレレ専門店で買った。楽器を買うのにローンを組んだのも初めての経験だった。基本的に後払いや分割払いにすることには抵抗があるのだけど、ほしいと思った時を逃して後悔するよりずっといいと思ったのも確かだ。

 新宿で買った1本目のウクレレは真っ赤に塗られたソプラノウクレレだった。幾つかの大きさに分かれている中でも一番小さいウクレレだ。ウクレレ目線で見るときっと巨漢に見える僕が弾く姿は、端から見て楽器自体が余計に小さく見える。実際に僕が演奏している場面を見てそう言われたこともあった。購入した時に一緒に付いてきた薄い生地で出来た簡素な黒いケースを抱えながら、小田急線に乗って家に帰ったのを思い出す。昔ファミレスのレジの近くで見かけたおもちゃの楽器とは違って、ちゃんとチューニングすれば色々な曲が演奏できる。

 新宿から中央線に乗って御茶ノ水で降りる。なぜかいつも行きと帰りで別々の改札を使うことになってしまう。本当は楽器屋に近い方の改札から乗降りしたいのだけどうまくいかない。だから改札を出てから右に曲がってまっすぐ行った交差点角にお店はあるが、いつもその手前にある本屋に寄り道してから楽器屋に向かう。自動ドアを入るとカラカラと乾いた音が鳴る。店舗自体は広いとは言えないが、壁には所狭しと幾つものウクレレが飾られている。そこで僕は1本目と同じくソプラノウクレレを買うことになった。

 2本目のウクレレはサイズこそ1本目と同じだが、値段は10倍以上だった。実際演奏して10倍以上の差を感じているかというと、正直10倍以上かどうかは自信がない。ただ音の鳴り方が全く違うのははっきり分かる。弾き比べるのを誰かに聴いてもらうとその違いははっきり分かるそうだ。お客さんの前で初めて演奏したマーティンのソプラノウクレレ。ペグはストレートでチューニングする時には少し神経を使うのだけど、小振りでいい音を聴かせてくれる。

 今メインで使っているのが3本目のウクレレ。マーティンのテナーサイズだ。価格は2本目の3倍以上したので分割払いで購入した。ソプラノウクレレが気に食わなかったわけでは全くない。ただもう少し大きめのウクレレがいいなと漠然と思ったからだ。並べて見るとその大きさが違うのがはっきり分かる。大きいのだけど、あくまでもウクレレという楽器同士で比べた時の話なので、僕が持って演奏しているとむしろちょうどいい大きさじゃないかと思っている。2回目に人前で演奏した時にはこのテナーウクレレを使った。ボディが大きくなり音量が大きくなったことは、演奏する僕も聴いてくれる人にもいい変化だと思う。

 iPhoneに表示した楽譜を、自動的にスクロールされるように設定して弾いている。弾いた弦が振動して、ボディ内の空間を揺らす。そしてボディを飛び出して僕の耳を揺らす。軽やかに、でも決して不安定ではないメロディーが夜を揺らしている。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

未分類

前の記事

すごいお母さん達
未分類

次の記事

不完全なりに