父親は俺なんだよっ!

 荒っぽいタイトルで虚を突かれた人もいるかもしれない。今日はすごくもやっとしたので、その勢いのままタイトルにした。「父親が立ち会わなくても出産はできる」と言われたら世の男性はどう思うか。個人的な意見を言わせてもらう。正直、この言葉を聞くと母親に比べて父親が軽んじられている気がする。何気ない会話のやり取りで不意に出たこの言葉に、僕は何とも聴き過ごせない響きを感じてしまった。

 今日は妊婦検診に出掛けた。病院の入り口に、PCR検査についての病院の対応方針が書かれたボードが設置してあった。前回の検診では置かれていなかったものだ。いつも通り僕らはアルコールジェルを一押しして両手に擦り込む。アルコールの匂いが微かに鼻をついた。連日世間を騒がせている例の感染症。マスクや手洗いうがいを欠かさずとも不安は残る。診察前の用事を済ませて産婦人科へ向かった。

 来院した時間はいつも通りだったけど、全体的に患者が少ないように感じた。産婦人科前の椅子に座っている人達の数もかなり少なかった。それが理由なのかは定かではないけど、すぐに順番が回ってきた。前回と同じようにエコーで胎児の様子を見る。特に問題なく順調とのことだった。今日は顔の表情が少し見えたので、エコー写真でその部分を写してもらった。

 安心していると、担当の先生から用紙を渡され簡単な説明があった。今日から検診の付き添い、出産の立ち合い、面会がNGになったそうだ。家族の面会は最小限に、という案内は以前に病院のホームページで確認していたが、まさかそれが更新されて父親である自分も含められるとは思っていなかった。それだけの状況になっているということなんだろう。実家の近くの病院に転院する可能性も含めて、早めの決断が迫られる状態になった。

 病院に行ってそんな状態だったという話をした時に「大丈夫、父親が立ち会わなくても出産はできる」と言われた時は、何と言い返していいのか分からなかった。母体と胎児の健康安全が第一なのは誰よりも分かっているつもりだ。病院の先生やスタッフの方々も、状況が改善する兆しがまだ見えない中、懸命に対応されているだろう。そのことに僕が思い至っていないと思われたんだろうか。悪気があってその言い方をしたわけではないことはもちろん分かっている。ただ、やっぱりその言葉を僕は素直に飲み込めない。

 妊娠から出産までの流れに関して言えば、母親と父親とでは身体的に決定的な違いがある。だから産むのは母親だ、とか出産の痛みは父親には分からない、なんていう言い方をするのかもしれない。父親が、母親の代わりにつわりや出産の痛みを経験できない、ということに苦しまないとでも思われているんだろうか。少なくとも僕は、妻だけがつわりや出産の時に苦しい思いをすることを何とも思わず過ごしているわけじゃない。だから「父親が立ち会わなくても出産はできる」という言葉には、母親に比べて父親の役割や我が子への思いが雑に扱われている気がしてならない。

 父親は俺だ。できる限りのことをしたい。できるだけ妻と子どもの側にいたい。親のエゴだと言われても。

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