不登校、それから

 「不登校」という言葉がまだ一般的でなかった頃、僕は中学生でそれを経験することになった。

 当時バスケットボール部に所属していた僕は、身長が低く脚も遅かったので目立って活躍できる選手ではなかった。上達も遅かったが、その頃アメリカのプロバスケで大活躍していたマイケルジョーダンに憧れていた。誰よりも練習すれば、彼のようにコート上で輝けると信じていた。早起きして、誰もいない学校の体育館でシュート練習をした。夜寝る時にはボールと一緒に布団に入り、天井に向かってボールを投げ上げてシュート練習もした。

 だがある日の練習中、チームメイト達が僕がシュートを決めるたびに囃し立ててきたことがあった。不思議に思っていたら、実は僕の背中にカイロが貼り付けていてそれがおかしくて皆で盛り上がっていたそうだ。励まされていたと思っていたので逆に落胆していたら、「どれだけ練習しても、お前はうまくならない。」と言われた。信じて疑わなかったことを全否定されたような心地がして、学校にも足が向かなくなっていた。

 冗談のつもりだったのかもしれない。気にせず堂々としていればよかったのかもしれない。「人の伸び代より、自分の伸び代気にしたら?」とでも言えばよかったかもしれない。親には体調不良と言って学校に連絡してもらっていたが、そんなことも長くは続かなかった。

 その後、学校に何らかの理由で行けない子ども達が集まるフリースクールに通い出した。時間割がなく、学年が違う子どもと一緒に遊びに出かけたりして伸び伸びと自由に過ごすことができるとても居心地のいい場所となった。しかしいつまでもそこに留まるわけに行かない。中学3年になった僕は、少しずつ学校に行く時間を増やし、修学旅行にも行った。春に無事卒業を迎えて高校にも何とか進学できた。

 不登校になって自分自身を見つめ直す時間をたくさんもつことができた。その時間を無駄にしないように、自分自身から目を背けずこれからも向き合って生きていく。

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