梅ヶ丘、羽根木公園の初春
桜の樹が少しずつ花をつけ始めた。昨日までの肌寒い空気はどこかにいって、上着を着ていると少し汗ばむ陽気だ。小田急線に乗って経堂で降りる。小田急線の駅は、世田谷代田を過ぎると大体同じ形のホームが続く。春は確実にやってくる。節目の別れと、新たな出会いはもうすぐやってくる。
経堂で降りて用事を済ませた後、駅に戻る途中の店でたこ焼き10個と鯛焼き1個を買った。朝食は家で一応は済ませたけど、天気がよかったので梅ヶ丘の羽根木公園で軽めの昼食がわりにしようと思った。店員さん達の掛け声が爽やかで、とても気分がいい。行きと同じ小田急線に乗って、来た時とは逆方向の電車に乗った。経堂からは二駅の梅ヶ丘に向かう。
梅ヶ丘で降りると、祝日だからなのかいつもの週末より人が多い気がした。羽根木公園は駅から5分くらい。子ども連れの家族が多い。子ども達は腕をまくったり、半袖になって元気よく走り回っている。小さな子どもは、お父さんお母さんが呼ぶ声を聞いているのかいないのか、フラフラとあっちこっちを歩いている。いつもより早く学校が終わってしまって、家にいる時間が長くなったこともあるのかもしれない。家にいても、子ども達は何かしら楽しみを見つけるだろうけど、やっぱり外で遊ぶのが一番ストレス発散できそうだ。
公園内の野球場そばのベンチに座った。僕はたこ焼きを食べて、妻が鯛焼きを食べる。鳩が数羽、何か食べ物をくれと言わんばかりにすぐそばを歩いている。もちろん何も彼らに差し出せるものは持ち合わせていない。別の場所で何か食べるものを探してもらうのがいい。
食べ終えて、一息ついて歩き出した。公園の奥に進むと、いくつかの運動器具が設置されている場所が出てくる。ストレッチをしたり、軽めのトレーニングも出来そうだ。吊り輪につかまって身体を目一杯伸ばしてみる。隙間なく縮こまっていた筋肉と関節が元に戻り、血が新たに通った心地がする。身体が軽くなった僕らはまた歩き出した。
子ども達の声がいたるところから聞こえる。手を引かれながら歩く子ども。他の子どもと一緒に走り回っている子。お母さんの腕の中で、気持ち良さそうに目を瞑っている子ども。子どもとかけっこしながら、息を切らしているお父さん。近い将来の自分達の姿を重ねながら、お腹の子を思う。君が生まれてくる頃の世界は、きっとまだ大人達は争いあっているだろうし、不本意ながら命を落とす人だってたくさんいるだろう。それでも未来は明るいと断言する。大人が今から一生懸命積み上げて、やっと比較になるかならないかの大きな可能性を手にして君は生まれてくるのだから。だからそれまではもう少し、中でゆっくりしていていいんだ。
君が僕に失望しないように、そして僕が僕自身に失望しないように。僕はもうずいぶん大人と言われる年齢になったけど、それでも自分の可能性をどこまでも信じて生きよう。