西の河原と、エメラルド

 エメラルドを直接見た記憶はない。それがどんな色か聞かれたら、西の河原に湧く温泉の色と答える。昨日で語り切れなかった草津温泉の話にもう少しだけお付き合い願いたい。

 草津町は、湯畑に向かって坂を下るすり鉢上の地形になっている。傾斜は結構急で道は広くないのに、車がそこそこ通る。子ども連れで出かける時は気をつけたい。ちなみに湯畑を含めた草津町の数カ所の映像がライブ配信されているので、一度見てはいかがか。少しタイムラグはあるものの、現地にいる自分の姿をカメラ越しに確認できるかもしれない。

 湯畑をぐるっと回って、細い路地に入る。お土産物や、飲食店、旅館が並ぶ通りを進んでいく。途中、温泉まんじゅうの店があり、おじさん達が出来立てのまんじゅうを振る舞っている。僕はあんこが苦手なので受け取ったことはないが、一体1日何個のまんじゅうを渡しているのだろう。

 個人的には、まんじゅうよりも温泉たまごが好みだ。先ほどのまんじゅう屋を過ぎたところにお店がある。温泉が湧く石造りの池に竹の棒を渡して、棒の中心にぶら下がった籠の中に生卵が浸かっている。おそらく半熟でとろとろになるようなちょうどいい塩梅の温度なのだろう。店員さんが、たまごを取り出して器に割り入れる。出汁の入った小袋を添えて出してくれる。座って食べれるベンチもあるので、休憩がてら腰掛けて一息つく。余談だが、筋トレをする身としてはここでタンパク質補給が出来るのはありがたい。

 西の河原はもうすぐ。ここまで結構歩いてきた。温泉たまごを食べ終わったらまた歩き出す。片岡鶴太郎美術館を過ぎると西の河原が見えてくる。少しずつ道は傾斜がきつくなる。河原の右手に川が流れているが、流れているのは真水ではなく温泉だ。気温が低いと川から湯気が立ちのぼっている。湯気が出ているのは川だけではない。地面からもあちこち湯気が出ている。さながら灼熱地獄のような景色だが、地面が歩けないほど暑いわけではないのでご安心を。ちなみに夜になると、ライトアップの光と相まって風景は更に幻想的に映る。

 河原の中ほどまで来ると、エメラルドグリーンの温泉が湧いている。日によって色味は結構変わるので、いつでも綺麗なエメラルドというわけにはいかないが、調子がいいと深く透き通った緑になる。入浴はできないので、目で見て鼻で硫黄の匂いを感じて楽しむ。もっとも草津町は大体どこに行っても硫黄の匂いがしているが。

 そこから更に上を目指して歩いていく。行き着く先には大きな露天風呂が待っている。西の河原露天風呂だ。途中には足湯があるので、そこで休憩することもできる。露天風呂までの最後の一休みを終えたら温泉に浸かろう。四方を緑に囲まれた露天風呂はかなり広い。入場券を買って、簡易的な脱衣所で裸になる。お湯は熱すぎずちょうどいい。人にもよるが、結構長く入っていられそうだ。

 家の近くに銭湯があったり、温泉施設ができる計画があるらしい。もちろんそれも楽しみだが、やはり風呂好きの僕としては自然に囲まれた広い温泉で疲れを癒したい。時々でいい。忙しい日々の生活の狭間に埋もれないように。全身の細胞で深呼吸するように。

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