こんな速かったっけ？

　先週末に渋谷のスクランブルスクエアに行った時、屋上でiPhoneの通信速度を計測してみた。5G通信に対応している機種を使っているけど、自宅にいる時はアンテナの表示が常に4Gで、下北沢の僕の行動範囲のどこにいても5Gの表示に切り替わることは今のところない。今使っている機種を購入する前に、4Gと同じ感覚で使えるようになるのは数年後だと言われていて、確かに日常生活で確実に恩恵を受けられるのはまだ先のことかもしれないと思い始めている。でも購入したことを一切後悔していないし、どこに行っても5Gが使えないわけではないから、せっかくの機会と思ってiPhoneをポケットから取り出した。「スピードテスト」とカタカナでGoogle検索すると、無料で通信速度を測ってくれる画面が表示される。

　スクリーンショットを撮っておくべきだった。確か400Mbpsは出ていたと思う。下北沢でも時々同じように通信速度を測ってみるけど、そんな高い数値は見たことがない。せいぜい10分の1より少し高いくらいだ。それでも何か不便なことがあるわけではないが、速いに越したことはない。晴天の渋谷の屋上でiPhoneの画面に表示された数字を見ながら、それが地上に降りて自宅に戻っても変わらないのなら、随分快適に使えるだろうと思えた。動画が再生されるまでの待ち時間でいらいらすることもないだろうし、長い動画や高画質の写真も躊躇わず送受信できるだろう。相手の顔を見て話すテレビ電話も、より鮮明に相手の表情が映るようになるかもしれない。

　何事もメリットばかりではないことは承知しているけど、5Gの可能性を垣間見た気がした。少し先の未来の暮らしを想像しながら電車に乗り込んでその日は自宅に戻った。やはり下北沢では4G通信しか使えないのは変わらない。自宅では固定回線をWi-Fiでパソコンに繋げて使っているから、通信速度で言えば4Gよりも速い。ただ今日は昼過ぎに全く繋がらなくなってしまった。固定回線側に何か不備があるとは考えにくい。例えば料金の支払いが滞って使えないといった状況でもない。原因が分からないまま、コンセントから繋がれた機械一式を抜いてしばらく放置した。そして数分後に再度繋ぎ直して通信ができるかを確認した。原因は最後まで分からなかったけど、通信自体はその後すぐ問題なく復活することになる。

　思い立ってそのWi-Fiの通信速度を測ってみることにした。電波の周波数が高い方と低い方の2種類を使用できるようになっている。それまでは低い方でいつも繋げていたけど、高い方での接続を試すことにした。周波数が高いと速度は出るが障害物に干渉されやすいというデメリットがあると聞いていたけど、家の中だし目に見える場所にルーターが設置してあるから問題ないと思った。iPhoneに接続したら、また「スピードテスト」で検索する。実行ボタンをタップすると時計回りでアイコンが動き出す。表示された数字は何と500を超えて600Mbpsに迫っていた。全く想像していなかった結果に興奮した。そんなに速度が出るとは予想していなかった。そのWi-Fiを使い始めて既に数ヶ月が経っていて、それまであまり使っていなかったけど、これからそれを使わない理由はないと素直に思う。パソコンでは正直あまり劇的な違いは感じなかったものの、スマホだと明らかに違う。低い周波数の方にも接続して計測したけど、100Mbpsを少し超える程度だったから更に驚く。

　渋谷の屋上よりも速い。裏を返せば固定回線のWi-Fi並の通信速度が街中でも実現できる可能性があるということだ。スマホの料金が安くなることもあって固定回線を契約しているが、今後の通信環境の進歩を考えれば、自宅で固定回線によるWi-Fiを使う必要性は薄れるかもしれない。もしくは固定回線の通信速度も更に速くなる可能性が期待できる。今の時点ではまだはっきりいつとは言えないが、実現することで暮らしがより豊かになりそうだ。物質的に恵まれるのではなくて、選択肢が増えるという意味でだ。特に今のような状況では、以前のような生活スタイルを維持することは難しい。かと言って何もできないわけでもない。誰かの顔を見ること、相手の声を聞くこと、自分の声を届ける方法は一つだけではない。