テープとパンツ
泣き叫んでいる子どものおむつを短時間で交換するのは簡単ではない。月齢が低い間は特に苦労していなかった。泣いているけど足の力は弱く、おむつを外して新しい物を付ける時にも邪魔されることはなかった。しかし大きくなるにつれて力は当然強くなるのだけど、それと同時に脚を器用に動かすこともできるようになってくる。こちらの腕を両足で挟んでどかせようとする。それには構わずおむつを取り替えようとするけど、おむつのテープを狙っている位置で止めるのが難しくなる。尻の下に置いたばかりのおむつの位置もすぐにずれてしまう。だからといって変えないわけにはいかない。身体を清潔に保つことの重要性は僕自身も認識しているから、嫌がって大声を出しても極力短時間で済ませようと思っている。
おむつと言ってもその種類は複数ある。息子が生まれた時から使っているテープで止めるタイプや、下着のように履かせるパンツタイプの物、そして僕は使ったことがないけど布製で繰り返し使うタイプもある。テープで止めるタイプが僕は一番楽だと思っている。一番慣れていると言ってもいい。繰り返し交換することで短時間で終わらせるコツも会得したつもりでいる。デメリットがあるとすれば、パンツタイプに比べてフィット感が少ないことだ。フィット感というのはあくまでも息子がおむつを着用している見た目で判断しているから、息子本人が実際どう感じているかは定かではない。肌とおむつの間に指2本が入るくらいの余裕を持たせるのが目安だと、妻が病院で聴いてきたらしく僕は未だにそれを目安にしている。
もう一つデメリットだと感じているのは、子どもが動くと一緒におむつも簡単に動いてしまうということだ。じっとしてくれていれば助かるけど、月齢を重ねるごとにそんな機会は少なくなっていく。いかに子ども達の気を紛らわせている間に、素早く交換できるかが重要になってくる。素早く変えたいけど、テープを止める位置が緩いとおしっこが結構簡単に漏れる。おむつが濡れるだけで済めばいいけど、経験上着ている服もすぐに洗濯することになるので、緩すぎず締め付けすぎずちょうどいい止め加減を探る。もしおむつの早替え選手権があったら、僕は結構いい成績を収められるんじゃないかと自負している。毎回手順を変えることなく、順序を決めておけば後は繰り返し交換して慣れて行くだけだ。
そう言えば以前息子の用事で池袋のサンシャインシティに出かけた時に、ハイハイ選手権なる言葉を見かけた。その時に実際に子ども達がハイハイで順位を競っていたのを目の当たりにしたわけではないが、それらしきイベントの告知がされていたはず。息子は今もその時もまだハイハイができないので出場することは困難だろう。参加するかどうかは別にして、開催されている場面を想像するだけでも楽しそうだ。いい意味でレースが成立しないかもしれない。名前を呼んでも真っ直ぐに親の元まで進もうとしない子どももいるだろう。蛇行しながら進む子もいれば、全く逆方向に行くこともあるかもしれない。レースの様子を実況するスタッフがいたとしたら、マイクで拾われて会場のスピーカーから聞こえてくる彼ら彼女らの声に驚いて泣き出す子もいそうだ。自分の子どもがレースに参加できなくても、そんな光景を眺めているだけで穏やかな気持ちになれそうだ。
最近はおむつを変えた後で服を着せる時に苦労するようになった。胸の辺りまで上着のボタンを外して、両脚は完全に服の外に出している状態だ。機嫌が悪い時はずっと脚をばたつかせているから、足首はかろうじて服に入るけどその後が続かない。縫い目に指先が引っかかって爪先が進まないのだ。ついつい息子の足首を掴んで引っ張りそうになるけど、無理矢理やってもうまくはいかない。脚を引っ張らずに服の方を動かせば案外スムーズに履かせられると気付いたのは良かった。それならば脚が動いていても服を通せる。ボタンを止めるのも難なくこなせたらいいけど、まだ少し手こずっている。パンツタイプのおむつのパッケージには、おむつ替えが大変になってきたらと書いてある。確かに大変にはなっているけど、まだ工夫できそうだ。サイズアウトしない限りもうしばらくテープとパンツを併用していく。