今日も山手通りを
最近は息子の生活リズムが前よりもかなり整って、自分達も毎日少しは余裕を持って過ごせるようになってきた。何時に起きて離乳食を食べさせ、その後は午前中にどれくらいの時間寝させればいいか。そして自分達が昼食を食べるタイミングを決めたら、自然と息子の昼寝の時間も決めることができるようになった。タイミングと時間の長さを把握していれば、例え今日のように借りれる時間に制限があるレンタカーで出かけても、ある程度ストレスなく行動ができる。今日はまた池袋で息子の頭の施術を受ける日だった。いつもよりも車で出発する時間を前倒しすることで、家で彼が寝ているタイミングをほとんど変えることなく出発できそうだった。
コンパクトカーを予約していたから、想定していた小ぶりの車種になるだろうと思っていた。それでも今日のように時々は少し大きめの車を借りられることがある。料金はそのままで車格が一つ上の車が準備されることは、そのレンタカー屋では珍しいことではなかった。車が大きいと運動性能が少し高くなるから、高速道路を走る時などはストレスが少ない。今日は一般道を走るのでそこまで大きな恩恵はないだろうが、カップホルダーの数が多かったり運転席にアームレストが備わることもあるからデメリットは感じない。高級車でもないから、多少車の寸法が変わっても運転する感覚としては差がないから、都心を走るにしても気を使い過ぎることはない。
正午前にサンシャインシティに着いて、子ども用品店に入る。店内を見回っている間に、息子は抱っこ紐の中で寝息を立てていた。午前中に眠る時間は30分程度に留めている。寝過ぎても夜の寝付きが悪くなるし、午後にも昼寝をするから少し気分をリフレッシュしてもらうくらいで充分だと思う。下北沢近辺には同じ規模の子ども用品売り場がないから、離乳食に大分慣れてきた息子が座れる椅子を探そうと思った。木製のテーブルが備わっているしっかりした作りの物や、テーブルとは別売りで身体を支えるだけの商品もあった。成長すればいずれ座らなくなることは目に見えているので、値段が手頃で簡単に上げ下ろしができそうな豆椅子を買うことにした。別売りの白いプラスチック製のテーブルも合わせて購入することにして、他の子ども用品も一緒に見ることにした。
ボールを使った遊びができないかなと考えていた。でも本格的なボールを与えても使い方が分からないかもしれない。遠くに投げられるほど器用でもないけど、掴んで持つことはできる。1,000円と少しで、柔らかい素材のボールの形をしたおもちゃを見つけた。オレンジ色でかなり粗い網目状になっていて、表面の所々には小さなBB弾のような球が複数閉じ込められて、振ると音がなる作りになっていた。息子の手でも掴みやすく、勢いよく振っても簡単には飛んでいかない。幾つかカートに入れた他の物よりも先に会計をしてもらって、ベビーカーで座って辺りの様子をじっと見回している息子の手元に置いた。何だこれという表情をして、表面の穴から指を入れてしっかりと掴んでいた。その後もしばらく掴んだまま振り続けて音を鳴らしていた。
サンシャインシティ内の飲食店で料理を注文して昼食を食べた。後は施術を予約した時間までに息子に昼寝をしてもらって、機嫌が良い状態で向かいたい。施術には1人しか付き添えない。前回は妻にお願いしたので今回は自分が行くことにしていた。妻の話によると室内は暖房がよく効いていて、上着を着込んでいくと暑く感じるかもしれないとのことだった。時間帯によっては西陽がきついから暑さに余計拍車が掛かるとも。だけど寒いよりはいいだろうと思って、いつもと同じ上着を着て訪ねた。雑居ビルの一室の入り口を開ける。すぐ正面には受付のカウンターがあって施術室も目に見える所に設置されていた。診察券を出して入り口横の椅子に座って待つ。名前が呼ばれたので荷物を持って奥の部屋に移動した。
息子を抱っこしたままでいいとのことだったので、足の上に座らせて施術を受けた。担当の先生の手は不思議な動きをしていた。優しく触っているだけにしか見えない。否定したくて言っているのではなくて、僕が持つ施術という言葉のイメージとあまりにも違うものだった。前回はずっと泣きっぱなしだったらしいが、今日は昼寝をしていたから泣き出すこともなく20分くらいで終了した。事前に聴いていた通り西陽が強く暖房もよく効いていたので汗が止まらなかった。息子が不思議そうな顔をしているのを眺めながら、袖で何度も自分の額の汗を拭っていた。以前よりも家でかなり動くようになったからか、頭の形も変化しているとのことだった。成長と共に頭の形は良くなるというのも間違いではないのかもしれない。
道が混む前に池袋の街を抜け出した。今日も山手通りを世田谷に向かって走る。ガソリンを前回と同じスタンドに寄って入れた。何はともあれ息子が元気でいてくれることが何よりだ。薄暗くなった夜の前触れに浮かぶ色とりどりの明かりが目に眩しかった。