24と25の間
南西の壁上部にエアコンが設置されている。そのこと自体は何も珍しくない。個数の違いはあっても、ほとんどの家でエアコンは必ずと言っていいほど備え付けられているのではないか。暑い夏には涼しい風を送り出し、寒い冬真っ只中の現在は暖かい風を吐き出し続けてくれている。部屋の温度を快適に保ちたい。できれば電気もエアコンも使わずにその環境を整えられたら理想的ではあるけど、それは現実的に不可能だ。エアコンを極力使わないようにはしたいが、度を超える暑さや寒さに耐え続けるわけにもいかない。
冷房でも暖房でも、まずは高めもしくは低めの設定温度で運転し始めている。リモコンは壁に掛けたままで操作する。ありきたりな電子音が鳴って、エアコンがゆっくりとその吹き出し口を開放していく。吹き出し口の下には夏に取り付けた風除けがそのまま張り付いていた。張り付いていたと言ったが、文字通り粘着テープで固定するタイプの商品を使っていて、テープが端から剥がれ始めていて今となってはあまり風向を変えられていない。風除け自体の重量に対して、粘着力が足りないように見える。
黄緑色のランプが点灯して運転中であることを知らせる。夏場は生まれたばかりの息子が身体を冷やさないように気を配っていた。暑がりだと自分で思っていた僕も、激しく動かなければ快適な温度だった。外気との温度差も少なくて、出かけた時にも疲労を感じにくくなっていた。たださすがに真夏になると、どうしたって外気との温度差が大きくなるから、設定温度はそれ以上上げられなかった。そうこうしている間に季節は移り変わって、短い秋がやってきた。エアコンがなくても快適に過ごせた時期はあまり長く続かずに、すぐに風が冷たくなっていた。
首をすくめながら歩く冬。息子を抱いて歩いているからお腹の辺りは暖かいのだけど、首元からは冷たい風が侵入してくる。マフラーはまだまだ暑いと思っていたのに、もう頼りたくなっている。真っ赤なマフラーはもう3年くらい使っているはずだ。まだ衣装ケースの中で眠っているけど、すぐに出番が回ってくるに違いない。家にいる時はエアコンはもちろん暖房にしている。設定温度は24度にしていた。サーキュレーターで空気をかき混ぜているし、高い温度に設定しなくても問題なく過ごせていた。しかし寒さが本格的になってくると24度では少し肌寒く感じることが増えて、結果今は25度でずっと様子を見ている。
24度に設定していると、思ったように部屋が暖まらないが25度だと逆に暖まり過ぎることがある。部屋の間のロールカーテンを降ろすと、暖かい空気が留まって更に暖かくなる。24.5度で設定できればと思うけど、家のエアコンは1度ずつしか調整できない。1度変わるだけで体感が大きく違う。24と25の間には何かあるのだろうか。何もあるわけがないと思いつつ、今日も黄緑色のランプを眺めている。