2020年8月17日 / 最終更新日時 : 2020年8月17日 caz81 未分類 3億の扉 目の前に広がる真っ白な空間には無数の扉が見える。それらの扉も皆白く新しい物のようだ。昼間に見る星のように扉の取っ手は眩しく金色に輝いて、まるでその道の職人が長い時間を掛けて丁寧に磨いてからまだそんなに経っていないような […]
2020年8月16日 / 最終更新日時 : 2020年8月16日 caz81 未分類 分からず屋 とても小さな茶色い蜘蛛が、ガスコンロの横の白い壁に張り付いている。最初に見たときは、今日日中に作っていたカレーが飛んで乾いたのかと思った。でもコンロからは距離があるし、カレーが飛び散るような動きはしていないはずだ。実際 […]
2020年8月15日 / 最終更新日時 : 2020年8月15日 caz81 未分類 食べねば 部屋の玄関からマンションの入り口までは太陽の光が直接当たらない。背の高い気が植っていて、繁っている葉が影を作っている。しかしどこからかやって来た生暖かい風は、不快感と共に僕の眉間に皺を作らせた。いつものように買い物バッ […]
2020年8月14日 / 最終更新日時 : 2020年8月14日 caz81 未分類 話すより素直に 遠い記憶を遡る。大学生3年生の時に、1年間カナダに留学していた事は以前このブログでも書いた。カナダは夏も冬も日本より湿気が少なく、冬の厳しい寒さを除けば過ごしやすい土地だった。それは確か冬だったと思う。僕らは車に乗せて […]
2020年8月13日 / 最終更新日時 : 2020年8月13日 caz81 未分類 家肉焼き 夕飯の献立は考えずに家を出た。相変わらず外は蒸し暑い。昼間に降り注ぎ人々の体力を奪っていった太陽の光はもうどこにもないけど、アスファルトに蓄えられた熱が太陽の不在をなかった事にしていた。皮膚から少しずつ温められて血液が […]
2020年8月12日 / 最終更新日時 : 2020年8月12日 caz81 未分類 溶き卵に豆腐 いつも蕎麦を盛っている深めの丼に、殻が茶色い卵を縁で割って四つ入れる。卵自体の重さを手首に感じた状態で、縁に向かって落とす感覚。下手に割ろうとしてコツコツ叩くと、小さな殻が紛れて入ってしまうから。入ったら入ったで何とか […]
2020年8月11日 / 最終更新日時 : 2020年8月12日 caz81 未分類 至る いつになったらそれは終わりを迎えるのだろうか。初めて下北沢に来た時から街の様子は変わり続け、その変貌ぶりは必ずどこかで行われ今日も続けられる工事によってもたらされている。移り変わって行くのは街だけではなく、そこに住む人 […]
2020年8月10日 / 最終更新日時 : 2020年8月10日 caz81 未分類 光の中にいる 大人と子ども。生まれてから過ごした年月の差。体格の差。経験の差。その差は大抵は大人が子どもを大きく引き離す事が多い。子どもが大人に比べて、余りにも大きなアドバンテージとして持っている物はないか。それはおそらく、きっと多 […]
2020年8月9日 / 最終更新日時 : 2020年8月10日 caz81 未分類 大きな木の下で 畑に囲まれたながらかな丘の途中に、その大木は枝を目一杯広げて夏の日差しを遮っていた。畑の作物は収穫を終えてしまったのだろうか。農家の姿も見えない。雑草が短く刈られたのが最近のようで、なぜかそこに人の気配を感じずにはいら […]
2020年8月8日 / 最終更新日時 : 2020年8月8日 caz81 未分類 湯煙に巻く 闇は深く、道路を照らす街灯もまばらにしか見当たらない。ヘッドライトの先の景色は漆黒の夜だけだ。背の高いレンタカーに乗って、連続する適度なワインディングから受ける重力に身悶えしながら走り続けている。明かりのほんの少し先の […]